鴛鴦日記

限界チャイナドルオタク in NY 演劇をする

日本に住む日本人にこそ知ってほしい、アメリカでのアジア系差別に関する10のこと

わたしがアメリカ、NYに昨年九月に引っ越してきて、そろそろ半年になります。

なかなか言葉に出来ない、様々な痛みがあったこの半年間の中、先日ジョージア州アトランタでのアジア人銃殺事件が起きました。八人のアジア人女性が人種を理由に殺されたこの事件をきっかけに、アメリカではアジア人差別に反対する取り組みが多く行われています。

 

しかしその実態は、どれほど日本で重要視されているのでしょうか。

事件が起きた当日、ショックと恐怖の中で開いたSNS上でわたしが見たのは、殆どの知り合いがその事件に全く触れず、当たり前に日々を送る姿でした。それがどれほどの絶望をわたしたちに齎したのかを知って欲しくて、この記事を書くことにしました。

記事の作成にはフィリピン系アメリカ人であるAさん、中国からの留学生であるYちゃん、そしてベトナム系アメリカ人のAさんに協力してもらっています。3人ともありがとうございました。

 

日本に住む日本人にこそ知ってほしい、アメリカでのアジア系差別に関する10のこと

 

1.アトランタでの銃撃事件について

現地時間の2021年3月17日、米南部ジョージア州・アトランタ近郊にて3か所の韓国系マッサージ店に21歳の白人男性が乱入し、銃を乱射して韓国系女性6人(そのほか非アジア系男女2人)を殺害するという事件が起こりました。男性は『アジア人どもは皆殺しだ』と叫んでおり、これはアジア系民族に対するヘイトクライムによるものだとされています。女性たちの中には二人の息子を持つシングルマザーの女性もいました。逮捕された男はその後、事件の動機について『I had a bad day.』(今日は嫌な日だったんだ)と語っていました。

 

2.中国人女性2人のひき逃げ事件について

同じく現地時間の2021年3月12日には、カリフォルニア州・レイクウッドにおいて大学を卒業したばかりの若い中国人女性二人が車を運転していた女性によって故意に撥ねられ、一人は330ft近く地面を引き摺られた挙句死亡するという事件が起きました。死亡した二人のうち片方は中国からの留学生であり、この事件もまたヘイトクライムによるものだとされています。

 

3.3800という数字

上記二つの事件は昨年の新型コロナウイルスの発生から今までに報告された、アジア系民族へのヘイトクライムのごく一部に過ぎません。Stop APPI Hateに寄せられただけでも既に3800件以上のヘイトクライムが発生しており、報告されていない件数を含めれば膨大な数になることが伺えます。人が死んでいないから、大きな事件が起きていないから、差別が存在しないわけではありません。日々誰かが傷つき、死の一歩手前を彷徨ってはいつかくるかもしれない恐怖に怯えています。誰かが死ぬのを待っていては遅いのです。

 

4.アジア人差別は根強く存在したもの

しかしこれらの差別は、新型コロナウイルスが原因で突然発生したものではありません。アジア系民族に対する差別は、21世紀以前より根強く存在していました。Fox Eyesなどのファッショントレンドが問題に上がったように、特にアジア系民族の容姿、文化をネタにした差別は長い間続いています。また留学生だけで無く、アメリカで生まれ育ったアジア系アメリカ人に対しても、彼らの容姿を理由とした差別や食事作法などを嘲笑う風潮は2021年の今でも見られるものです。

 

5.どうか関係ないことだと断じないで欲しいこと

わたしがこの記事を出来るだけ短く、すぐに読んで大体の内容が把握できるように書いているのは、一番初めに記載したように日本に住む多くの日本人の無関心さに強い絶望を覚えたからです。『自分はその場にいないから関係ない』のではなく、どうか世界中のどこにいたとしても、あなた自身が遭遇する可能性のある差別問題に目を瞑らないで欲しいと思います。以下に具体的に、どう日本に住んでいながらこういった差別に対抗できるのかについて軽くですがまとめさせていただきます。

 

6.人種を理由にした自虐をしないで欲しいこと

これだけは絶対にやめてほしいというものを一番上に持ってくることにしました。イエローモンキーという言葉があります。古くは欧米人によって極東アジアの民族、特に日本人を馬鹿にするために使われ、今はその本人たちが使うところを目にする言葉です。これ以外にもアジア人に対する差別用語、ブラックジョークは沢山ありますが、どうかどうかそれらを使わないでください。それらを笑いのネタにしないでください。あなたのその行動は、あなたの周りのアジア人でない相手に人種を理由にした差別を行う餌を与えるだけで無く、多くのアジア人の心を傷つけることにつながります。

 

7.政治的な話題だと臆病にならずにあなたの意見を発信して欲しいこと

日本では政治的な話題を公共の場で行うことがどこか憚られるような傾向があると思うのですが、どうか、どうかあなたの意見を発信して欲しいと思います。長々とした声明文を送ることに気後れされるようでしたら、ハッシュタグ#StopAsianHate を使っていただけるだけでもそれは大きな力になります。何度も繰り返すようですが、わたしたちアメリカに住む留学生にとって一番の恐怖は、母国にもアメリカにも居場所を無くすことです。ただ一言、反対していると呟いてもらえるだけで救われる人々がいます。インターネット上での発信が不安ならば、家族に話してみるだけでも構いません。ただ見て見ぬ振りだけはしないで欲しいのです。

 

8.日本の文化や名所などについて発信するだけでも助かること

政治的な話題に触れたくない、という方は、日本の良いところについて発信してもらえるだけでも良いのです。差別問題は、人権と尊厳を傷つける問題です。私たちは様々な場面で、アジア人である誇りを傷つけられるような言葉を、行為を浴びせられてきました。日本が一番だ、という言い方をする必要はありません。ただ自分たちの自我に誇りを持っているということを世界に発信してもらえるだけでも、それを見る人々の考えに影響します。第二言語が使える方は、ぜひそれも活用してください。あなたのすきな日本について、私たちに、世界中に知らせてください。

 

9.わたしが実際に言われたことについて

さて、ここで少しだけいやな話をさせてください。というのもわたしが以前、何よりも傷ついたのは日本人女性による『差別なんか存在しないんじゃないの?』という言葉でした。知らないことも、体験していないことも罪ではありません。だからただ、わたしが実際に体験したことについてお話しさせて欲しいです。あんまり聞いていて楽しい話ではないので箇条書きにします。

・路上で唾を吐き掛けられ、『ウイルス』と罵られた

・突然つけていたマスクを剥ぎ取られ道に捨てられた

・アジア人であることを理由に金をせびられ、断ったらRacistと呼ばれた

・男性の集団に『いくら払えば出来る?』などと声をかけられた

・階段から突き落とされそうになった(運良く近くにいたカップルが手を掴んでくれたので落ちることはありませんでした)

この全てが半年間で起こりました。

 

10.募金のリンク

ここまで読んでくださりありがとうございました。

わたしはNYに来る以前はカナダのバンクーバーに暮らしており、その際も日本人であることを理由に差別をされた経験がありますが、新型コロナウイルスが広がって以降の我々が直面している事態は想像以上でした。正直、毎日怖くて怖くてたまりません。スーパーに買い物に行く時でさえ、誰かがこちらに向かって歩いてくることを、後ろから付けてくる誰かがいることを我慢しなければいけない生活が、果たしてフェアだと言えるでしょうか。

またどうか、『それくらい覚悟して留学しろ』などと言う方が現れないことを祈ります。どこにだって、そんなことを覚悟しなくてはいけない人間は存在しません。全ての人が持つ当たり前の権利を手にすることに、覚悟は必要ないはずだからです。

最後に、アジアンヘイトを止めるための活動をしている団体に募金できるリンクをまとめてあるサイトを貼らせていただきます。どうかこの記事を読んでくださった全ての人々が、我々アジア人の尊厳と人権について考えてくださいますように。ありがとうございました。

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https://www.housebeautiful.com/lifestyle/a35885105/stop-asian-hate-aapi-donate/